連覇を狙うフランス・サッカー 「8月のブルー、苦手デンマークに快勝」(4/4)

■思い出のナントの地を選んだジダン

 さて、デンマークの話題が中心となったが、今年の「8月のブルー」は例年といささか状況が違う。まず、フルメンバーでの試合が4月のポルトガル戦以来であるということである。久しぶりのフルメンバーでの試合ということで、ファンの関心が高まっている。1週間前にはチケットが完売し、ナントでは1998年のワールドカップ以来のことである。
 18人の「ベストメンバー」が発表されたが、この中で注目したいのは何といってもジネディーヌ・ジダンである。実はジダンは昨シーズンはアフリカシリーズとコンフェデレーションズカップに欠場し、14試合中7試合にしか出場していない。このたびユベントスからレアル・マドリッドに史上最高の移籍金の87億円で移籍し、デンマーク戦の前日にレアル・マドリッドはインテル・ミラノと試合があり、クラブとしては新看板を顔見せしたいところであるが、ジダンはナント行きを選択した。ジダンにとって「8月のブルー」「ナント」には格別の思いがある。
 まず、ジダンが代表にデビューしたのは94年8月17日のチェコとの親善試合であった。当時ジダンはボルドーに所属しており、地元ボルドーでの試合で前半終了間際に立て続けにゴールを許し、0-2とリードされた局面の後半63分にコランタン・マルティンスに代わってジダンがピッチに立つ。ジダンは85分と87分に連続得点を挙げ、地元での敗戦を逃れる立役者となったのである。なお、この試合ではリリアン・テュラム、ブルーノ・エンゴッティも代表デビューしている。
 そして96年の欧州選手権の予選の序盤でスコアレスドローが続き、ドーバー海峡を渡るチケットの行方も怪しくなってきた95年4月26日、ジダンはナントの地で行われたスロバキア戦で代表初先発を言い渡された。フランスはこの新しい指令塔の下で4-0と大勝し、前年来のフラストレーションを解消したのである。
 また、コンフェデレーションズカップで代表入りした8人はだれも今回選出されなかった。特に「代表に最も近い」と目され、「ジダンをしのぐのでは」とさえ評された地元ナントのエリック・カリエールは落選してしまった。間近で見た日本の皆さんもお分かりの通り、カリエールは非常にフランス的な選手である。しかしながらやはりジダンの壁は高かった。ジダンにすれば、昨年来の代表でのプレゼンス不足を「ナント」で行われる「8月のブルー」のユニフォームで解消したいところであろう。

■期待を抱かせるW杯プレシーズンの幕開け

 さて、試合は黙とうから始まる。この黙とうは30歳の若さで逝去したフランスサポータークラブの創立者バンサン・キロにささげられたものである。フランス代表にとってはコンフェデレーションズカップの決勝に続く黙とうとなり、欧州では黙とうが行われることは珍しくはないが、日本では試合前の黙とうが話題になったようである。日本で試合前の黙とうというと、松下電器産業株式会社の創立者の松下幸之助氏が亡くなった際に横浜で行われた全日空-松下戦くらいだからであろう。
 さて、ベストメンバーのフランスの布陣は、GKにファビアン・バルテスが負傷から復帰、DFラインはリリアン・テュラム、マルセル・デサイー、フランク・ルブッフ、ビシャンテ・リザラズ、守備的MFにはパトリック・ビエラとエマニュエル・プチ、攻撃的MFはジダンを中心にシルバン・ビルトールとロベール・ピレスが両翼に位置し、ティエリー・アンリがセンターフォワードに構える。
 フランスは試合開始直後から積極的に攻撃を仕掛ける。13分にはプチとピレスがパスを交換し、最後にピレスが個人技から見事なシュートを放ち、デンマークのGK、名手シュマイケルの後継者のトーマス・ソレンソンはまったく動けず、フランスが先制する。前半はその後もジダンが基点となった攻撃を仕掛けるが両チームノーゴール。
 後半の立ち上がりは、逆にデンマークが最も波に乗った時間帯であった。しかし55分にアンリに代わってダビッド・トレゼゲが出場し、フランスも攻撃の糸口をつかむ。そして試合の終盤にはブルーが再びその輝きを取り戻し、追加店が生まれるチャンスも数多くあったが、結局、1-0という最少得点のまま試合は終了した。フランスは苦手デンマークにこれで3連勝となり、通算成績も五分に持ち込んだ。
 後半にはトレゼゲだけではなく、ビリー・サニョル、バンサン・カンデラ、ジョアン ・ミクー、スチーブ・マルレと5人の交代選手を投入したが、そのレベルがレギュラーと変わりがないことにロジェ・ルメール監督は満足している。そして、帰ってきた主役ジダンは、シーズン序盤で体調が完全でないにも関わらず、良い試合と良い結果が残せたことに満足するとともに、思い出の地ナントで迎えてくれた36548人の大声援がチームを支えてくれたことに感謝の意を示している。
 ワールドカップをポストシーズンに迎えるシーズンの最初の試合でブルーが好スター トし、ファンは大きな期待を抱いたのである。(この項、了)

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