第2774回 6か国対抗に向けてフランスラグビー始動(6) 経験豊富なイングランド、キャリアの浅いフランス

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■6か国対抗のメンバーと1試合ずつ対戦することになったフランス

 フランスは、オータムネーションズカップのグループリーグの最終戦でイタリアに勝利、フィジーとの不戦勝を含み、3戦全勝でグループBの首位となり、順位決定戦で優勝を争うことになった。順位決定戦の相手となるグループAの首位はイングランドである。両グループとも世界ランキングで最上位のチームが首位突破したことになる。また、フランスは新型コロナウイルスの感染拡大での中断明けの10月以降、イングランド戦が5試合目となるが、6か国対抗で対戦する5つのチームと試合をすることになり、実にバランスの良い対戦相手となった。

■ワールドカップ準優勝メンバーで迎え撃つイングランド

 イングランドはグループAでジョージアに40-0、アイルランドに18-7、ウェールズに24-13と競り勝って首位となった。イングランドにとってフランス戦は、準優勝した2019年のワールドカップは台風のため試合が中止となり、引き分け扱い、優勝した2020年の6か国対抗では敗れており、この新型コロナウイルス禍において開催されるタイトルで、フランスに勝利して優勝をしたいところである。
 12月6日、イングランドはロンドン、トゥイッケナム競技場でキックオフを迎えた。そして注目すべきは両チームのメンバーである。イングランドは2019年のワールドカップで活躍したメンバーがほとんど残り、これまでのグループリーグで戦ってきたメンバーが中心となる。プロップはエリス・ゲンジ、フッカーはジェイミー・ジョージ、右プロップはカイル・シンクラー、ロックはマロ・イトジェとジョー・ローンチブリー、フランカーは左にトム・カーリー、右にサム・アンダーヒル、ナンバーエイトはビリー・ブニポラ、スクラムハーフはベン・ヤングズ、スタンドオフはジョージ・フォード、スリークォーターバックスは左からジョニー・メイ、オーウェン・ファレル、ヘンリー・スレイド、アンソニー・ワトソン、フルバックはエリオット・デイリーというおなじみのメンバーであり、全員が日本で開催されたワールドカップに出場している。キックオフ直前にプロップのマニ・ブニポラがゲンジに変更というアクシデントはあったが、ゲンジもキャリア十分である。

■なじみのない名前の並ぶフランスのメンバー

 一方のフランスであるが、左プロップはハッサン・コランガ、フッカーはピエール・ボルガリ、右プロップはドリアン・アルデゲリ、ロックはバティスト・プザンティ・コンパニョーニとキラン・ゲラシ、左フランカーはカメロン・ボキ、右フランカーはアントニー・ジェロン、ナンバーエイトはセレバジオ・トロフア、スクラムハーフはバティスト・クイユー、スタンドオフはマチュー・ジャリベール、スリークォーターバックスはガバン・ビリエール、ジョナタン・ダンティ、ヨラム・モエファナ、アリベレティ・ラカと並び、フルバックはブリス・デュランとなる。
 フランスのスポーツを取り上げている本連載の読者の方でもなじみのない名前が並んでいるのではないだろうか。この15人のうち日本でのワールドカップに出場したのはラカ1人である。そして昨年2月1日にスタッド・ド・フランスでイングランドに勝利した試合に出場している選手はリザーブにも入っていない。

■クラブと代表の力関係が影響したメンバー構成

 これは秋の代表戦に出場できるのは各選手3試合までというフランスリーグとの取り決めにより、この試合も経験の浅いメンバーで臨むことになってしまった。フランスの場合、主力のうち多くは秋の試合の序盤のウェールズ戦、アイルランド戦で使ってしまったのである。また、頼みのロマン・エンタマックは負傷ではずれ、結局秋の国際試合には2試合しか出場しなかった。15人の中で最多キャンプは2015年のワールドカップに出場したデュランの30試合、それ以外は全員一桁の代表歴で代表デビューこそトロフアだけであるが、15人の代表歴数を足しあげても68にしかならず、その半分近くはデュランのものである。歴代で2番目に代表歴の浅い先発メンバーとなったが試合は意外な展開となったのである。(続く)

このページのTOPへ