第18回 ライー、パリで引退試合(2)

■パリジャンの期待を集め、チケットは前売り完売

 ライーの引退試合には4万人近くの観衆が集まった。サン・ルイスでのベネズエラ戦の5万5000人には及ばずとも、ラパスでのボリビア戦の2万5000人をしのぐ観客の数であり、チケットは前売りで完売している。パルク・デ・プランスでチケットが前売り完売となることは年に数回、この試合に対するパリジャンの期待がどれだけ多いかがわかる。
 パリサンジェルマンで活躍したライーの姿に加え、ワールドカップで世界の頂点に立った時代のブラジルを見たい、というのがこの人気の理由であろう。そして、黄金時代であった1990年代のメンバーを見て、今季も上位にはいるものの優勝するには奮起が必要なパリサンジェルマンを鼓舞する、というファンの熱い想いが伝わってくる。

■パリサンジェルマンの栄光に郷愁にふけるファン

 パリサンジェルマンのメンバーはベルナール・ラマ、ジョエル・バツ、アラン・ロッシュ、ブルーノ・エンゴッティ、ローラン・フルニエ、ダニエル・ブラボー、ポール・ルグアン、パトリス・ロコ、ダビッド・ジノラといったフランス代表経験者に加え、リベリアのミスター・ジョージことジョルジュ・ウェア、鹿島アントラーズに所属し日本でもおなじみのブラジル代表のレオナルドに加え、大御所として采配を振るうルイス・フェルナンデスも自らピッチに立った。1990年代前半から中盤にかけてパリサンジェルマンだけではなくフランスサッカーを支えた選手が勢ぞろいした。このメンバーを見て郷愁にふけり、再びパリサンジェルマンが栄光の座につく日を夢見るファンは少なくないであろう。

■ブルーより青いカナリア軍団

 一方のカナリア色のユニフォームに身を包んだブラジル・オールスターも豪華メンバーである。ライーをはじめベベット、ゼ・マリア、マルシオサントス、ジュリオセザールなどに加え、セレッソ大阪で活躍したジルマール、鹿島アントラーズに在籍したモーゼル、ジョルジーニョ、ジュビロ磐田の闘将ドゥンガ、ヴェルディ川崎時代に所属したアモローゾとさながらJリーグに所属したブラジル人選手のOB会となった。さらにこちらの大御所は義兄で1982年ワールドカップ・スペイン大会では黄金のカルテットの一角となったソクラテスである。そしてこのスター集団を率いるのはテレ・サンターナの子息のルネ・サンターナである。1990年代のブラジル代表メンバーが中心であり、1992年8月にパルク・デ・プランスでフランス代表を2-0と下したブラジル代表は「ブルー(フランス代表)より青い」と高く評価され、いまだにパリジャンの語り草である。

■ゴールラッシュ、そして収益は慈善団体に

 ユーリ・ジョルカエフとロナウドは負傷のため欠場したが、スタジアムに駆けつけ観戦した。大声援で始まった試合はスペクタクルな試合となり、双方3点ずつのドローというゴールラッシュとなった。全盛期のパリサンジェルマンとブラジル代表を象徴するような試合であり、久しぶりに満員となったパルク・デ・プランスの観衆は大満足で家路についた。
 なお、この試合の収益はライーがパリサンジェルマンの僚友レオナルドと設立した「GOL DE LETRA」という財団に寄付された。この財団はブラジルの恵まれない子供たちのためにサンパウロとリオデジャネイロにセンターがあり、600人の子供たちが所属している。パリサンジェルマンはそのうちの10人を1週間のフランス滞在と引退試合に招待したのである。(この項、終わり)

このページのTOPへ